昨年ですがResolumeの基礎記事を書きました。
その次のお話で、VJプレイどうやればいいんだ・・・ということで一般化できるかどうかはわからないのですが私なりに言語化をしてみます。EDMとか4つ打ちとか、Remixの場合とかで。
1.とりあえずの考え方
これは人にもよるのですが、VJプレイの基礎的なところをなんとなく言語化すると
・音の増減に合わせて変化を加える
・BPMに合わせると踊れる(ただしなんらかの方法でBPMの情報をソフトに与えつづけなくてはならない)
・足せば足すほど白くなる
・曲の展開には一定数の法則性がある
ということです。
特に「音の増減に合わせて変化を加える+足せば足すほど白くなる」から導かれるプレイ方針としてですが、音が増えたときに素材を足すのには限界があるので、音が減ったときに素材を抜いてあとで足す余裕を作っていくことが大事かなと思います。
上記の映像は汎用素材を4つほど足したものなのですが、これでは素材の味どころではなく白い画像を投影したのと変わりなくなってしまいます。
足せば足すほどいいわけではなく、ときに暗めの素材を使うとか、音が静かになったところで素材を引く工夫も必要になってくるでしょう。
VJソフトの構成的にも、だいたいはフェーダーを上げると絵が足される、もしくはエフェクトがかかるという構成を組むのがいいかなと思います。
2.曲の構成を理解する
まあものは試しで4素材と適当なエフェクトくらいを読み込んでVJやってみましょう
ResolumeとかGrandVJとかVDMXで4素材を読み込んでnanoKontrol2とか適当なコントローラーに振ります。
曲の構成に合わせてとりあえず手を動かしてみましょう。
その前に、EDMとかの簡単な構成と演出すべきポイントの名前を。
上のサイトが詳しいですがVJ的に優先的に知っておくのは3つくらい。
「ビルドアップ」「ドロップ」「ブレイク」です。
(もちろんいろんな曲の構成を知っていると曲に合わせた展開が予想しやすくなります。)
復習で、必ずそうしろというわけでないですが「音が増えれば増えるほど重ねる素材は多くなる」的なスタンスはあります。それを踏まえた上で見てみましょう。
①ビルドアップ
上記の楽曲はEDMの有名曲のひとつなのですが、
この動画でいうところの1:02-1:17あたりがビルドアップです。
これから盛り上がるぞ・・・な予感がなんとなくわかるかと思います。
MVでも映像が高速で切り替わってます。
(実はこういうEDMのPV見るだけでも表現のヒントになるのです)
曲にもよりますが実は映像的には一番エネルギーが高いところな傾向があります。
点滅・ストロボ(高速点滅)・InfinitZoomの類を使うことが多いです。
手動でやる場合はどこかしらの素材かエフェクトを入ってるフェーダーをガシガシするパターンが多いです。
自動でやる場合は16分音符くらいごとに発動するエフェクトや拡散系のエフェクトを作っておくと筋肉に優しいです。
②ドロップ
上記のMVでいうと、1:17あたり。この曲ではビルドアップとドロップの間に無音があり、映像が黒落としになっています。
ドロップ部では、拍に合わせて映像が切り替わってますね。VJでいうなら、ステップシーケンサーやBPM連動素材・ビートフラッシュなどが該当するかと思います。
EDMとかでは一番音的にエネルギーが高いところになります。(音が減ることもあります)
一番低音とかがいろいろなるところで一番フロアが熱狂するところです。
ビートに合わせたエフェクト等を作っておくと色んな場面で対応できます。
が注意の必要なところもあります。
前述のように、必ずしもドラムが4つ打ちでなってるわけじゃなかったり、FutureBassやJersey Clubとかのようにリズムが変わる傾向のドロップもあります。
これの1:17あたりがドロップなのですが、先程の楽曲とは違うリズムの印象を受けると思います。この動画だと入ってくるシンセの音に合わせて真ん中の絵が動いてるような感じになります。
FutureBassのドロップとかに備えてビート準拠じゃなくて4拍で長く作用するエフェクトや音に反応するエフェクト等を作っておくのもアプローチとしてありです。
必ずしも治安の悪い画面を作ればいいというわけでもなく、場合によっては1つ素材を少しだけ足しとく、赤にする、ビートで黒にするみたいなやり方もありかと思います。
③ブレイク
上記SpectrumのMVでいうと1:46あたり。音的には楽器が減り、静かな映像に切り替わってます。
ドロップなどの後で落ち着くところです。賢者タイム
ゆっくり素材を抜いて少なくしていきます。
1素材にしたり、全体を薄くしたり、白黒やEdge系・ノイズ系のエフェクトを加えるのも手です。
とりあえずはこういうところを要所だけでもやれば、かなりそれっぽく見えるはずです。
3.レベルを定める
映像の演出においてはレベルを定めておくのが演出管理がしやすいです。
私の場合だと・・・
Lv.0 (黒落とし)
Lv.1 (1素材のみ・ちょっと暗め・EdgeDetection・モノクロ化。ブレイク等に)
Lv.2 (2素材程度。歌い出しとかちょっと伴奏加わったところ)
Lv.3 (2~3素材+上掛けor軽めのエフェクト。歌モノのサビなど。)
Lv.4 (派手なエフェクトや大胆な色変え・ステップシーケンサーなど。サビやドロップ)
Lv.5 (点滅やInfiniteZoom等。ビルドアップなどに)
あと大事なのが必殺技はいざというときにとっておくことです。
必殺技と言うのはドロップにかける派手なエフェクトとか、ステップシーケンサーとかそのあたりですね。常に発動し続けても目が疲れるので基本はLv1~2を行き来するくらいでいいのかもしれません。
わたしのコンポジションにもドロップエフェクト的なやつがあるのですが、あれは要所で使うものなので常に発動するのは違います。
例えるならば、毎ターン必殺技使ってる少年誌バトルや格闘ゲームが面白いかって言うとそうとは限らず切り札あとにとっておいて効果的に使うほうが面白い、そんな感じです。
4.BPM感を理解する
BPMSync(タップや自動BPM検出など)はしてもしなくてもいいとは思いますが、BPMを示すとお客さんが飛んだり跳ねたり踊ったりオタ芸を打ったりしやすくなります。
音ハメ的に見えることがあったりと見てて気持ちいい映像になるので、Tapする余裕があるかBPMがゆっくり変わるジャンルのイベントではTap等でBPMに合わせた表現にしていきましょう。
一般的にはVJ素材でBPM連動するものはBPM120もしくは128が基準で作られているものが多いので、ResolumeなどではBPM Syncにして曲のBPMでTapすればBPMに合います。
ただ、逆に言うとBPM連動表現をするとTap等でBPM SyncをちゃんとしなきゃならないのでBPMが頻繁に変わる原曲系やロックサウンドのパーティ・アニクラ等では合わせるのが大変になるというデメリットはあります。
また、意外と4拍きっちり打つタイプじゃない曲も多いので、流れるようなリズムであればBPM連動する素材じゃなくてトンネル系や宇宙系などの流れるような素材を出すのもありです。例えばFutureBassやDrum'n Bassなどは、HouseとかEDMとかハードコアよりは「BPMで打っていく感じにする」かの流派が結構分かれると思います。
トンネル系素材はBPM連動性がないので、BPMをしっかり打たない系の曲や離席時に便利です
なので、この音楽ジャンルではこんな感じの表現にするのが好きかも!というのを一つ「BPMに合わせて映像でどうリズムをとるか?」という視点で個人で考えておくといいかもしれません。
BPM連動の話等はこのあたりの記事で。
5.曲のイメージを理解する
曲のイメージに合わせて素材投影するのも大事です。
具体的な曲名挙げての説明は以下のnoteや素材分類の記事で書いてますが、歌詞に出てくるオブジェクトやOPED映像の色感、作品の舞台に関わる素材、ジャケットの色などいろいろヒントはあります。それに合わせて自分なりに素材を2-3セレクトして組み合わせるといい感じになります。
たとえば
海が舞台のアニメの曲で水の素材出したり、
主人公の必殺技が炎系な作品の曲で炎の素材出したり、
夜のクラブをテーマにした曲でミラーボール出したり、
フューチャーな曲で宇宙旅行っぽい感じにしたり
いろんなアプローチが考えられるかと思います。
6.ときにお休みしてVJソフトに任せる
とはいえ全部追従するのは疲労もすごいので、たまに休んだりVJソフトにおまかせするのも大事です。特に地方のクラブミュージックパーティではオールナイトの時間ワンオペなことも珍しくなく、一晩中音ゲー的なプレイをするととんでもない体力を消耗します。
とくにビルドアップとかを手動でやるのは楽しいんですが腱鞘炎になったりMIDIコンの寿命を縮めたりします。
曲想が大きく変わらない場合はそんなに一生懸命素材を変えたり追従しすぎる必要はないので、筋肉と眠気に相談しましょう。
無難なのは2素材程度混じってる状態で置いとくことです。
★注意
前も貼りましたが、VJやってる上でテレビ映像とかよりは高速点滅などのエフェクトを使う機会はあるにせよやりすぎるとポケモンショック事件のように健康を害すことになりかねないので、「表現は適度に」も重要になります。
ストロボの輝度を落とす、場合によっては全体の輝度を落としておく、激しいエフェクトや素材の多用はしない、赤い素材の高速点滅は避ける、など留意は必要でしょう。
そういう意味でも表現をするにあたっては足しより落としのほうがいろんな効果が得られたり、落としから素材替えとかだけでもかなりの演出表現が得られると思います。
映像が激しすぎるかも...って思ったら一応確認してみてください。
以下の記事はVJや映像にかかわる人は読んでおくといいと思います。
(たぶんポケモンショックのときに生まれてない世代もいるので)
★どうやって練習すればいいの?
わたしも過去にやりましたが、とりあえずは誰かのMIXにVJつけてみましょう。
即興でもいいんですが、まず自分の映像ライブラリを理解することがとても大事です。
ほしい素材があるかというと必ずしもそうではなく、こういう素材ほしいな~というのをなんとなく理解していけばいいと思います。
便利なのは曲ごとに素材を選んでハメていく方法です。
こんな感じで、まずは自分や友人がとったMIXに対して素材を2-3選んでじっくり全曲あててみてください。練習会とかでもいいかもしれません。
繰り返すと即興でどの素材を当てればいいかも習得できてきます。
★表現を真似たり取り入れたりする
近道ですが、「出てる絵が好きだなと思うVJさんのプレイを自分なりに真似してみる」とか「MVの表現を真似る(音がどうなったときにどういう素材やエフェクトの発動をしているか観察する)」とかもいいかと思います。
ぜひ意識的に見てみてください。
まとめ
・どの素材あてるか歌詞や曲名やジャケットから考える
・BPM変わったらTap等で流れてる曲とVJソフトのBPM合わせる
・ビルドアップとドロップ・ブレイクなど要所で仕掛ける
・レベルを定めてコントロールする
こんな感じです。もちろんこれが正解!ってわけではないですが基本的指針としてはこんなところだと思います。
論的な話になりましたが、考え方の一として助けになれれば幸いです。